空の暗さを味わって

 ぬいつぎが開店して間もないとき、最期の1時間だけ照明を落として、暗い中で営業してみたことがある。入口で小さなランタンを持ってもらって、その灯りを頼りに本を読んだり、ぬいぐるみを見たりする。
 
 まだ店も今ほど知られておらず、近所の人も何の店だかいまひとつ分かっていなかった時期だった。照明が落ちているから外から見ると営業しているようには見えず、その時間帯に狙ってきてくれる人は1人か2人だった。今も、そのために買ったLEDランタンが8個もある。買いすぎた。
 
 その時に来てくれたお客さんのひとりが褒めてくれたのを覚えている。「すごくいいですね。すぐに流行ると思いますよ」と。ふだんから褒めるのが上手い人というのはいるものだ。それでも、その時は開店したばかりで不安もあったから、素直に受け取ることにした。嬉しかったし、励みになった。
 
 音楽ユニットの moumoon が毎月満月の日にライブをしていると知ったのはもう何年も前。曜日ではなく月の満ち欠けでライブの日を決めている。月が明るい日に集まったり、日が出ていない時間に夜の暗さを味わったりすることがもう少しできるといいな、と思っている。
 オーロラを見たり、砂漠の真ん中を歩かなくても、地球に住んでいるんだよなと実感して、わくわくして少し怖くなるような。そして集まってそれを分かち合えるような。