大雨を眺めて

 台風や梅雨の大雨が、窓の外をひとつの絵のようにしてしまうと、落ち着いた気持ちになる。屋根や壁から雨の音が響いたり、換気扇からパタパタと音が聴こえていてもいい。さらに、籠城するための食料と本を前日に買っておいた場合なんかは、それ以上言うことはない。
 ここまでの文章が枕草子みたいになっていて面白い。
 日本は全体が熱帯になっていく。去年の梅雨の時期だったか、インドネシアに住んでいたことがある人が「向こうもちょうどこんな感じだった」と言っていて、それなら文句無しで熱帯だ。
 窓やドアの四角い枠越しに見る大雨。
 学校の教室の窓、剣道場のドア、アパートの小さな天窓、サークル棟の入口、JR品川駅高輪口、恋人が運転する車の助手席、立ち往生したコンビニ、近代美術館、2階にあるカフェ、誕生日プレートの向こう、都立大学の音楽スタジオ、モスバーガー、観たい映画のないシネコン、2時間制の居酒屋。大雨を眺めながら、たまたまそこに居合わせた誰かと交わす珍しい会話。そんな僕たちを後ろから映すカメラのカット。あるいは、漫画の一コマと空っぽの吹き出し。
 悪いことばかりではないな、と思う。