父が画家になった
父がずっと絵を描いている。もう長いこと続けている趣味だ。
子供の頃に車で土手に連れていかれて、父が風景をデッサンしている横で、スケッチブックに(目の前と景色と関係のない)カブトムシを描いた記憶がある。
そんな父が画家になった。
僕はとっくに「アマチュア画家」と名乗っているのだと思っていたけど、どうやら絵を1枚でも売ったことないと画家とは言えないらしいと最近聞いた。今でもその定義を100%納得できたわけではない。
最近、父の絵を誰かが買ってくれたらしい。これで晴れて画家になった。僕は「父が画家なんです」と言う権利を手に入れた。次の目標は「ああ、画家の息子さんなんですね。いかにもそんな感じがします」と言われることだ。そういういい加減で愉快なことが人生には起こるものだ。
帰省した時、「画家になったら、自分の作品を並べて〇〇記念美術館とでも書いて公開したら」と冗談半分で言ってすぐ、将来、茨城にある私設美術館を相続する可能性を考えたら恐ろしくなってきたので、すぐに撤回した。税理士に「父が画家なんです……」と言う自分を、一瞬想像した。