断言恐怖

『君が手にするはずだった黄金について』(小川哲)を読んでいる。短編集だ。
 
 最初の作品のなかで、正しさや厳密さを求めるあまり、何かを断言することを無意識に避けている、と主人公が指摘される場面がある。「たぶん」や「もしかしたら」で始まって、「と思う」や「かもしれない」で終わる文章を書くから弱いのだと。これを読んで、自分のことを言われているのかと思った。
 過去にここに書いた文章をわざわざ振り返るまでもなく、僕も同じような癖があると思う(ほら)。そして、これは僕が最近気にしていて、やめたい習慣でもある。もっと言い切っていいはずなのだ。
 
 断言しないことを指摘された主人公と、その恋人のやりとりはこうだ。
「断言恐怖症だね」と美梨が言う。 「先生、どうやったら治りますか?」と僕は聞く。 「十分な睡眠と、規則正しい生活、最低限の運動、バランスの取れた食事――では治らないですね」 (中略)「真実を話そうとしすぎなのです」 「真実を話すことは悪いことですか?」 「悪いことではありませんが、就職はできません」
 
 就職活動をしている相手に、なかなか痛烈。でも本当にそうだな、と笑ってしまった。
 別に就活が上手くいく人ほど人間的に優れているとは思わない。でも、就活以外でも、断言して、誤解されて、その先でたくさんのことが生まれる。なんか、最近こんなことばかり考える。