猛ダッシュ中トトロ
お客さんから「中トトロ」と「プーさん」のぬいぐるみを引き取った。ぬいつぎをSNSで見つけてくれた方が長いこと家に眠っていたぬいぐるみを、当店に託すことに決めてくれたらしい。嬉しい。
プーさんの方は口のフェルトが取れていて、そこを黒の刺繍糸で置き換えた。口がない顔もかわいかったけど、お迎え予定のお客さんと相談して決めた。
中トトロの方はからだが歪んでいてまっすぐ立てない。左右の耳は前後に開いていた。伝わるかわからない表現だと思いながらも書くと「猛ダッシュしてる中トトロ」のような見た目になっていた。外側についたゴミをブラシで落として、丸洗い。乾かす過程で歪みが小さくなるように整えた。あまりやりすぎると凹んでしまうから、ほどほどに。少し傾くものの、自立するようになった。耳も上に立ち上がる。
きれいになったな、と思いつつ、中トトロに関しては、これで良かったのか?と思ったりもした。
猛ダッシュ中トトロはそのままでなかなかに個性があったし、歪みも歴史の一部とも言える。自立するように整えるのはいいにしても、耳はそのままが良かったのでは? 元々の魅力を伝えるのがぬいつぎの役割の一つなのだから、余計なことをしてしまったのでは?
正解はない。ぬいつぎに来て僕の手が加わることで今の中トトロの姿があると考えれば、整えても良かったと考えることもできる。
それに、整えたとは言っても新品の状態とは違う魅力が残っているのは確かだし、そもそも新品でも同じものはない。
……と、自分を納得させることにしたけど、これからは引き取ったぬいぐるみは形を整える前に一度立ち止まろうと決めた。