エスプレッソとスティックシュガー

エスプレッソを飲みながら、人生で初めてエスプレッソを飲んだ日のことを思い出した。それは高校の放課後で、友達と4, 5人でSくんの家(ニンテンドーのゲームが沢山ある)に遊びに行く途中でカフェに寄ったときのことだ。
その店はたぶん20代の女性2人が新しく始めた小さなカフェで、今はもうない。僕たちはそこでコーヒーを飲み、パスタを食べ、おしゃべりした。小遣いを参考書に注ぎ込んでそこまでお金のない僕も、毎日の風呂掃除で稼いでいた友達も、財布に株主優待の商品券の束が入ってな友達も一緒に並んで、なんだかおしゃれな時間を過ごしていた。
そのカフェである時、店員さんが「エスプレッソって飲んだことある?」と聞いてきて、目を疑うくらい小さなカップに入ったそれを人数分くれた。スティックシュガーを2本、真ん中で折って全部入れて、スプーンで一回しだけ混ぜる。そうすると上は苦くて、下はとても甘い飲み物ができあがり、それをちびちび飲むのだと教えてくれた。月に1回くらい現れて背伸びしている学ランの高校生がかわいかったんだろうと、今なら思う。自分も今、そういう気持ちになることがあるから。あの2人の店員さんは、今どうしているだろう。僕たちのような客が来たことが良い思い出になってたらいいな。