黄色いブタ

弟から電話がかかってきた。内容はあまりにも個人的で、緊迫した調子で話されたことなのでここには書けないけど、前触れもなく掛かってきた電話にびっくりした。その口調の変わらなさに、どうしてお前はずっとそうなんだと思ったりした。
弟とは、僕が学生で弟が仕事を辞めたフリーターだったとき、一緒に住んでいたことがある。昼間は僕が留守にし、夜は弟が焼き鳥屋かバーに仕事に出る。電気を消して寝ていると、たまにタバコの匂いに包まれた弟が泥酔して帰ってきて目が覚めた。弟は僕の1Kのアパートに持ち込んだ布団の上に転がって寝た。
月に一度、弟のバイトがない夜に近所の24時間営業のマックで一緒に夜食を食べに行った。チキンナゲットで、だらだらと2人で話した。代金は2人が1日100円ずつ入れていくブタの形の黄色い貯金箱から出すことにしていて、入れるのをサボった弟はよく数日分をまとめて入れる羽目になっていた。
この先どうするかとか、何をしたらいいのかというような有益そうな話はほとんどせず、バイトの店長がムカつくとか、コンビニのあのパンが美味いとか、そういうことを話していた。一度、父親の誕生日に財布をふたりであげないかと弟が言い出して、言い出したわりには金が無くてイライラしてそうな感じだった。人を喜ばせたい割に、計画性と覚悟がついてこない。どうしてお前はずっとそうなんだ。